TLP中国語

中国語は世界で使用人口がもっとも多い言語です。中国や中華圏が国際的なプレゼンスを示すようになるなかで、その重要性はますます高まっており、学習者が急増しています。TLP中国語では、会話のツールとしての中国語だけでなく、中国語で書かれた文学や歴史などに関する知識を学び、将来的に、中国や中華圏を通じて世界とつながるという発想をもって、中国語で各界のリーダーを相手に対等な交渉ができるだけの高い知性を具えた人材を育成することを目指します。1年半のプログラムの後半には、南京大学などでの短期語学研修*に参加できます。南京大学とはリベラルアーツ・プログラム(LAP)を通しての関係も強化しており、南京大学の学生も東京大学での短期研修に参加しています。

*南京大学との学生交流には、株式会社ゼンショーホールディングスから寄付金のご支援をいただいています。

考え方とめざすもの

戦略的な人材の養成という新たなコンセプトが求められている

刈間 文俊

TLP創設者、東京大学名誉教授
【Profile】刈間 文俊(かりま ふみとし)1952年生まれ。専門は表象文化論、中国現代文学・中国映画史。中国映画を東アジアにおける文化交流の視点から研究、2013年に江蘇省友誼奨を受賞。

グローバルリーダー育成プログラム
中国語プログラムからのスタート

 グローバル化時代に対応して、国際的に通用する人材の育成が大学に求められています。東大における「グローバルリーダー育成プログラム(GLP)」のスタートもまさにそこを目指しています。国際的に通用する人材の育成というと、どうしても英語重視に傾きがちです。もちろん、基礎学力と専門知識に加えて、英語を使いこなす能力は必須ですが、そもそも国際化とは英語だけでいいのか――その疑問がTLPの出発点となっています。
 いうまでもなく、中国語は使用人口が世界でももっとも多い言語です。中国の国際的なプレゼンスが急速に大きくなるなかで、世界的にも重要性が高まり、学習者が急増しています。とくにアジアにおいては、国際的な言語ツールとしての中国語の必要性は高まるばかりです。そうなると、東アジアに位置する日本に必要なのは、グローバルな視野の下で、バランスのとれた現実感覚を研ぎ澄ますことができる人材です。母語の日本語に英語と中国語を加えたトライリンガル・スキルは、東アジアのこれからを担う人材が具えるべき基礎的能力となるでしょう。
 いまこそ、確かな英語力に加えて、中国に関する教養を身につけ、一定の中国語による交渉能力を具えた人材が必要であり、それはあらゆる分野で求められています。これこそが、あらゆる分野に進む教養学部の学生を対象にTLPを開設した目的です。英語に次ぐ重要な言語として、中国語の教育には「戦略的人材の養成」という新たなコンセプトが求められているのです。

逆風のなかでスタート
中国語習得意欲あるコアな学生にこたえたい

 TLPの準備を始めたのは、2012年秋でした。ちょうど尖閣問題が厳しさを増し、日中関係が悪化していたときです。東大でも中国語を履修する学生が減少していましたが、このようなときだからこそ優秀な人材が必要であり、我々の投げるボールに応えてくれる学生がいるに違いないという期待と確信がありました。
 そして、TLP中国語はスタートした1年目から、じつに意欲的な学生が参集してくれました。これは中国の重要性を意識したうえで中国語を習得し、国際的な場で活躍しようというコアな学生が増えたということです。
 TLPに参加するためには、英語の成績が学年の上位1割に入っていることが前提です。選考から漏れたものの、インテンシヴコースで中国語を磨き、英語の成績を上げて、TLPに再挑戦しようという意欲のある学生も大勢います。これに応えて、英語と中国語の条件をクリアした学生には、TLPへの参加の道を開いています。

やる気ある優秀な学生に向けた
勉学のためのプラットホーム

 TLPはやる気のある優秀な学生向けに用意した、勉学のためのプラットホームであり、「学生の力を伸ばせるところまで伸ばすプログラム」。選ばれた優秀な学生は、徹底的に伸ばすことを目的としています。学生の力に応じて、教材とカリキュラムもどんどん変えていきます。優秀な学生、意欲ある学生のために、常に教材開発に取り組んでいます。
 TLPが目指しているのは、単なる言葉の使い手ではありません。語学力を磨いたうえで、先方の教養人と対等に交流し、交渉のできる能力を培ってもらいたいと考えています。そのためには「人としての力」が大事になります。若いときに多くの優れた人と出会う機会を提供するために、各界で活躍するゲストによる特別講演会も開いています。
 また、中国とのつきあいでは、人脈が大事だと言われます。人脈の基礎となるのは、相手との信頼関係です。それには若いときに同世代の中国人の友人を持った経験が役に立つはずです。そのためのプラットホームとして、サマースクールをはじめとする南京大学との教育交流も行っています。
 さらに、第1期生が3年生となった2015年4月から、彼らを対象に「東西文明学」を特設科目として開講しました。これは「後期TLP」として位置づけられるもので、「〜語を教える」から「〜語で教える」をスローガンに、英語・中国語を使用言語として「思想と批評」「言語と歴史」「国際社会科学」「環境と身体」の4種類の講義群を用意しました。さらに、2020年度からは「後期TLP」の基本コンセプトを引き継ぎそれをバージョンアップした「東アジア教養学」の講義群を開講するようになりました。
 2016年には第1期生が卒業し、中国語習得の人材を大きな実績としつつ、TLPのプログラムはその後、独語、仏語、露語、韓国朝鮮語、スペイン語にも広がりました。
 「グローバルリーダー育成プログラム」を基盤としたTLPの可能性にぜひ注目し、学生のみなさんの積極的挑戦を待っています。

授業のポイント

発信力を鍛える

学生は語学を専攻しているわけではないので、中国語を勉強する時間は限定されます。限られた時間の中で、学生の能力を最大限引き出すために着目したのが発信力です。高い教養を身につけている学生は、すでに発信すべき内容を持っています。そこで、いかに中国語で表現するのかを重視し、「中国語で伝える力」をつけることに注力。作文や会話、発表型の授業に比重を置いています。

学生たちが授業を創る

能力と意欲の高い学生をさらに伸ばすため、学生のレベルや要望に合わせて教材とカリキュラムを柔軟に変化させています。学生の要望から生まれた1年次の作文授業や、その成果に基づいて開講した2年次の上級作文授業など、フィードバックを重視した新しい授業スタイルを取り入れています。特に優秀な学生には、個別対応も行うほか、学生自身が交流し、自主的に勉強する雰囲気や環境づくりも意識しています。

知的興味に応える

「中国語を学ぶ」から「中国語で学ぶ」へ――。最終目的は、中国語習得ではありません。中国語で何を学ぶのかに照準を定め、学生のさらなる知的興味に応えられるよう、各教員は自分の専門領域に即した独自の教材を用意しています。結果、中国語を学びながら中国の歴史や文化、現代の中国社会における諸問題など、中国に関して理解と考察を深めることができます。多くの優れた人と出会う機会を提供するための「特別講演会」も、こうした狙いのためです。教科書にしばられることのない生きた授業が展開されています。

学生が持っている素地とTLPの相乗効果で
中国語での高い表現力が発揮されています

王 前

東アジア・リベラルアーツ・イニシアティブ(EALAI)
TLP中国語 特任准教授
【Profile】王 前(おう ぜん)修士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学博士課程単位取得満期退学。政治哲学・思想史。単著『中国が読んだ現代思想』、共著『近代日本政治思想史』、『論語入門』など。

 限られたTLPの講義時間の中で、学生の能力を最大限に引き出すため、作文や会話、発表型の授業に重点を置いています。なかでも演習授業の半分を中国語作文に充て、文法習得と並行して発信力や表現力の強化に取り組んでいますが、学生の高い表現力には驚かされています。それは、これまでに身につけてきた知性や教養、日本語での表現力といった、彼らがすでに持っている素地と、TLPとの相乗効果で、中国語をツールとした高い表現力が発揮されたのだろうと大いに評価しています。
 私たちが重視しているのは、中国語で「何を」学ぶのか。学生の旺盛な知的好奇心や知識欲にこたえられるよう、独自の教材を用意しています。
 私の専門領域は政治哲学や思想史なので、歴史学者による東西文明についてのエッセイ、実業家や中国本土以外の文筆家による文章など幅広いジャンルの良文を読ませたり、多様な文体に触れられるよう文語体の文章を紹介したりしています。作文でも、中国の映像ニュースや社会問題、文化などを題材に感想を書かせています。これは単に中国語だけでなく、中国に関する最新情報、思想や文化にも触れることで、さらに高い教養を身につけてほしいという狙いがあります。
 学生たちは自主的に集まって会話したり、教員を囲んで会話したりしています。少しでも時間を見つけて、発信力を磨こうとする向上心には脱帽します。互いに高めあう環境は、私たちが予想した以上。今後、サロン的な場も提供できればと構想しています。

学生からの高度な欲求に応える授業
その知的なやりとりに喜びを感じています

鄧 芳

グローバルコミュニケーション研究センター
TLP中国語 特任准教授
【Profile】鄧 芳(とう ほう)博士(文学)。中国北京大学中国語言文学系博士課程修了、東京大学大学院人文社会研究科博士課程単位取得満期退学。中国古典文学、中国魏晋南北朝隋唐五代の詩歌研究。学術論文「元結楽府における『比興體制』とその新楽府に対する影響―『舂陵行』を中心に―」、「致君尭舜上,再使風俗醇――盛唐后期到中唐前期的文儒思想及其文学影響」、「元結和杜甫――盛唐到中唐転折期的一対有意味的比照」など。

 TLPの中国語教育では、高度な中国語作文に力を入れています。実は作文の授業はTLP第1期生の要望から生まれたものです。TLP1年目の冬学期に、学生から「作文の授業をしてほしい」という声があがりました。当初、1年生に作文のカリキュラムは組んでいませんでしたが、要望を汲んで作文の授業を設けてみると、中国語を半年しか学んでいないにもかかわらず、彼らの表現力が際立っていることに驚きました。そこで、2年目には上級作文の授業も開講しました。
 このように変化をいとわず、能力の高い学生をさらに伸ばす授業スタイルにも積極的にチャレンジしていますが、予想以上の手ごたえを感じています。中国語のみの授業を要望する学生もいますが、そうした優秀な学生にはよりハイレベルな文章や題材を紹介し、課題を出すなど、個別対応もおこなっています。
 2年生の上級読解の授業では、難易度を王先生と相談しながら設定しています。エッセイや小説、新聞記事のほか、学術論文、著名人の講演録、古典詩や現代詩を取り上げることもあります。
 私の専攻は文学なので、言葉のニュアンス、一つの文字が呼び起こすイメージを大切にしています。例えば、「春」を主題とする中国古典文学、現代小説など多様な作家の文章を比較したり、そこから派生して、日本人と中国人で季節感にどのような違いがあるのかまで考察したりすることもあります。教科書にしばられない講義内容は、私たち教員にとっては力を試されているような緊張感もありますが、学生との知的なやりとりができるのは大きな喜びでもあります。

後期課程におけるトライリンガルの学びについて

後期課程には、前期課程で母語以外に2つの言語を集中的に学んだ後これをさらに発展させるプログラムがあり、「東アジア教養学」という科目が、英語・中国語・日本語(PEAK生のみ)で開講されています。基本的には前期TLP修了生が対象ですが、英語と中国語の双方において、前期TLP修了生と同等かそれ以上の能力があると認められれば、新たに後期課程からこのプログラムに参加することができます。また、海外研修も本プログラムの修了要件に含まれています。

現地調査に基づいた事例研究を通して
中国語で農村や環境の社会問題を考察します

菊池 真純

グローバルコミュニケーション研究センター
TLP中国語 特任准教授
【Profile】菊池 真純(きくち ますみ)博士(学術)。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科国際関係学専攻博士後期課程修了、北京大学大学院環境科学与工程学院博士課程環境科学系交換留学課程修了。農村政策、資源管理政策研究。単著『農村景観の資源化』、共著『中国の森林をめぐる法政策研究』、『棚田学入門』など

 「後期課程」で私は、①中国語学習の「上級中国語」と②中国語で学ぶ「東西文明学(国際社会科学)」を担当しました。私の専門領域は「環境社会学」ですので上級中国語では、農村の環境問題をテーマにした新聞記事などから作成した問題提起型のオリジナルテキストを使用し、中国語を学びながら並行して中国社会を学ぶプログラムにしました。毎回、各講義の最後には受講生の議論の機会も設け、発信力の強化にも注力してきました。
 また東西文明学では、「森林保全政策」や「農村開発政策」をテーマとし、私が行った現地調査の内容を中心に、中国各地の事例を中国語で紹介しました。中国農村の事例研究の学びから、最終的には、これらの事例が日本社会といかなる関係があり、また国際社会の中でどのような意味を持つのかを考え、討論しあうことを目標として授業を行ってきました。バージョンアップした「東アジア教養学」の講義でもそのような授業をするよう心がけています。

サマースクール

語学の習得には、集中的な訓練がもっとも効果的です。サマースクールでは、中国語の実力を磨き、中国への理解を深めるために、朝から晩まで中国語漬けとなる充実したカリキュラムが用意されているので、現地で語学学習に専念することができます。

中国語サマースクール

中国語を1年間学んだ学部2年生を対象に実施する、3週間の中国語の特訓プログラムです。南京大学海外教育学院の協力をいただき、南京で開講します。
 1クラス10名の少人数クラスを編成し、午前中は聞く、話す、読む、書く能力を鍛える語学学習にあて、午後は中国事情の講義や太極拳の講習、企業見学等を行います。

TLP中国語を受講して〜学生インタビュー

仲間の存在が学びのモチベーション
「中国語で学ぶ」ことで、
文化的視野がさらに開けました

磯 尚太郎

教養学部(前期課程)文科三類 1年(2015年度)
 私は東洋文化に関心があります。将来アカデミックな分野に進んだとしても、国際的視野は必要になるでしょう。東アジア文化圏という視点から物事を考えるうえでも、中国語を学ぶことは不可欠だと考え、TLPを履修しました。語学には、文化的資源が内蔵されています。たとえば、ドイツ語やフランス語を学べば、哲学や思想など、その言語圏の文化まで学ぶことができます。それが語学を学ぶメリットでもあると考えています。その一方で、果たして現代中国語にそうした文化的資源が眠っているのか。正直なところ、懐疑的な思いを抱いていました。
 ところが、先生方から提供される教材は、中国人の視点に立った文章が多く、そこからは中国人が東西の思想にどう反応し、思考したのか、そしていかに受容していったのか、あるいは、中国人が伝統文化をどのように背負っているのか、どんな問題意識を持っているかまで読み取ることができました。これは、中国に関して日本語で書かれたテキストとの大きな違いです。「中国語で学ぶ」ことで、文化的視野が開けた思いがしました。そして現代中国語を学ぶ意義も、ここにあるのだと納得できたのです。このように「中国語を使って、何を学ぶのか」という視点について、思索を深めることができたのは、TLPを履修した大きな意義だと思います。
 私はこれまで、独学で複数の言語を習得してきましたが、いずれも読解が中心で、会話のトレーニングは積んできませんでした。ところが、TLPでは発信力をつけることが重視されたので、中国語で発信し、仲間と交流したいという気持ちが生まれました。これは初めての感覚です。TLPの仲間の存在は、中国語を学ぶモチベーションともなっています。今は、留学生やTLPの友人と中国語で会話するのが楽しい。春には南京大学に短期留学する予定なので、現地の人と深い会話ができることを楽しみにしています。

TLPというハイレベルな学びで
中国語コミュニケーションの最終形を
イメージしています

黒岩 広大

教養学部(前期課程)理科一類 1年(2015年度)
 私は幼いころ数年間だけ、香港に住んでいました。中国文化に触れるとともに、父親が中国語でコミュニケーションを取りながら仕事をする姿を目にしていたことから、大学では中国語を選択し、いずれは研究にも生かしたいと考えていました。そこでせっかく中国語を学ぶのなら、しっかり勉強できる環境に身を置きたいとTLPを履修しました。オリエンテーションで、プログラムの内容を聞いたときには、その期待からゾクっとするような興奮を覚えました。
 20人弱の少人数クラスならではの授業で、発音を何度も矯正してくださるなどの丁寧な指導に加え、本質的な質問もしやすい。それが例えば、その日の授業の本筋からは外れることでも、自分には興味のあることで、かつゆくゆくはクラスの皆にも有益であろうと判断した質問をしたときに、その意図や回答を共有できる雰囲気なのです。意識の高い学生が多く、ハイレベルな学びができることに満足しています。
 先生方が教材として提示してくださる文献や、ニュース記事などの今生きて動いている中国語は、現在の私にはまだ手が出ないくらい高い水準のものもあります。それでも、なんとかして読んでみたいという意欲が湧き、知的好奇心が満たされています。  私は、中国語の文章は中国語で理解したいと思っています。中国語の文章は、日本語で正確に切り取ることはできません。日本語に翻訳された時点で、日本語の文化に変質してしまうからです。その点、先生方は、できる限り中国語で説明してくださるので、中国語のニュアンスが伝わってきます。ここにも、「中国語で学ぶ」ということの意義があると思っています。
 これらは、すべてTLPだからこそできる授業だと評価しています。とはいえ、私の目的はTLP修了にあるわけではありません。「TLPというコンテンツを使って、何かをする」のが最終形です。今は、会話や文法、リスニングという基礎体力をつけている段階。最終的には、TLPを超えた中国語コミュニケーションが取れるようになりたい。その最終形が見えているくらいの基礎体力は身についているという自覚があります。

南京大学の学生と
交流し互いの理解が
深まりました

大島 知子

教養学部(前期課程)理科二類(薬学部進学) 2年(2015年度)
 私にとって、中国はよくわからない国。正直なところ、あまりいいイメージは持っていませんでした。でもせっかくTLPを履修する資格があるのなら、この機会に中国について学ぶのもおもしろいのではないかと思い、履修を決めました。  TLPで中国語を学び、さらに2015年夏に南京大学サマースクールに参加してみると、中国に対するイメージが一変しました。若い人たちの考え方などが、日本人と共通する部分も多いことがわかったのです。
 南京大学サマースクールでは、午前中の授業のほかに、午後は篆刻や太極拳、中国の歴史学習などを体験しました。これらはあらかじめ組まれたプログラム以外に、学生が自主的に行動する時間や、南京大学の学生と交流する時間もありました。中国版コミュニケーションアプリも使って、生き方や将来について、ときには政治の話まで語り合い、互いに理解を深めることができました。ただ、午前中はすべて中国語の授業とはいえ座学だったので、そこでも南京の歴史など突っ込んだテーマの授業も受けたかった。そうすれば、彼らとももっと深いやり取りができたのではないかと思います。
 2年生になると、TLPでは発表型の授業が増えました。意見を発表するなど、発信力をつけるのが今の課題です。先生方から現代中国について問題提示されるのですが、それに対して論理的に考えを組み立て、それを中国語にする際の語彙や表現力などがまだ不足しているのを痛感しています。言いたいことを言えないもどかしさを感じますが、それが今のモチベーションになっています。
 教養学部前期課程を修了すると、私は薬学部に進学します。論文を読むため、英語には今後も触れていくことになりますが、せっかくここまで中国語を学んできたのですから、何らかの形で中国語も学び続けていきたいと考えています。

TLPはこれからの
職業生活に影響を与える
存在となっています

石神 友希穂

法学部 3年(2015年度)
 私はTLPの第1期生です。これまで独学で複数の語学を習得していたので、TLPの開講を聞いたときには「私のためのプログラムだ」と確信しました。
 期待して臨んだのですが、1年目なのでプログラムが確立していませんでした。授業の時間数が現在よりも少なく、進度も遅かったのです。1日も早く中国語で発信できるようになり、王先生とは国際関係、鄧先生とは中国古典など、先生方の専門領域について中国語で議論したいのに、そのレベルに到達できるのか、焦りさえ感じました。仲間たちも同じことを考えていたようで、1年の夏以降、先生方に「進度を速めてほしい」「教材を変えてほしい」「課題を増やしてほしい」などと要望し続けました。
 すると先生方は、柔軟にまた迅速に要望にこたえてくださり、授業の内容や教材も変わっていきました。先生方が私たちの知的好奇心や語学習得欲を満足させてくださり、一緒に授業を創っていっているような充足感も味わいました。一方で、レベルの高い仲間と切磋琢磨できる学習環境は期待どおり。互いに尊敬でき、「こういう人たちと会いたかった」と思える仲間がここにいたのです。
 2年の夏には南京大学サマースクールに参加しました。それまでに上海には行ったことがありましたが、中国語を学んで行った現地は距離感がまったく違いました。「中に入った」という手ごたえがありました。だからこそ、日常会話以上のレベルが欲しい、通じなくて悔しい思いをしたかったとさえ思いました。留学は今の語学の実力を運用し、練り直す機会だと考えているからです。その絶好の機会となったのが、2015年秋に参加した北京研修でした。政府機関や中国企業を訪問し、先方も手加減せず懇談してくれました。中国語の未熟さを痛感しつつも、満足できるものでした。
 現在、私は就職活動中です。TLP仲間とも、これからの職業生活で中国とどうかかわっていくのか語り合っています。法学部で中国外交や政治を学んでいるのもTLPを受講したからですし、将来像の選択肢のなかに中国が入ってくること自体、TLPがなければありえなかった。TLPが人生を左右するほどの存在になっているのは確かです。